滝 良太郎
10年ほど前にボクシングをやっていて
当時のトレーナーにそそのかされ、アマチュア
の試合に出たことがある。
映画やアニメでボクシングを覚えた私は
ロッキー・バルボアと矢吹丈のウィークポイントだけ
運悪く受け継ぎ、ガードが恐ろしく甘く、叩かれ、叩
かれ、ろくに手も出ずに試合は終わった。
そんな試合を2度ほどやって、私はボクシングから
フェードアウトしていった。
そんな僕が、昨年の7月から、あるボクシングジムに
通っている。
あいかわらずガードは甘いので、スパーリングなどは
行わずに縄跳びや、シャドーボクシング、サンドバッ
クを叩いて自己満足している。
今より頭は悪くできないから、それくらいの練習で十分だ。
そんなゆるゆるの状態だから、プロの選手と話す機会は
あまりない。
そんな私にも仲の良い(と私は思っている)プロ選手が
2人いる。
8月1日、その2人が同じ日に試合をするということで
大阪まで応援しに行く事にした。
私は普段ジムではおとなしくしているので、会場でも
おとなしく応援する。
京都から応援に来た、ジムの練習生や家族、友人の
大歓声の中、M君がリングに上がる。
私はどういう心境かわからないが、リングに上がる
Mくんを見て、なんだか泣けてきた。
理由は未だにわからない。
Mくんは対戦相手に比べると筋肉の張り、肌のツヤが
遥かに上である。
試合前から私は勝手にMくんの勝利を確信した。
試合は相手選手も健闘し、私が思っていたより
僅差にはなったもののMくんは勝利した。
レフェリーがMくんの勝利を告げたときは、さすが
の私も興奮した。
そしてメインイベント前の試合、"もう一人のMくん"
がリングに上がった。
噂では今回が引退試合らしい。
リングアナから試合前の戦績発表が告げられる。
なんと、"もう一人のMくん"はもう15戦も試合
をやっている。(今回で16試合目)
知っていたはずだったが、改めて聞くとすごい。
私の経験したアマチュアの試合2試合でも、それなりに
試合前は緊張して、試合の日となるとすごく不安だった。
それを8倍、それもアマチュアでなくプロの試合で。
試合の前半はほぼ互角の展開で進んでいたが、中盤から
若さで勝る相手のコンビネーションが決まり出し、徐々に
相手がポイントを重ねる展開に。
最終ラウンドは"もう一人のMくん"が残った力を振り絞る。
連打・連打で攻めるが、相手からダウンを奪う事はできずに、
残念ながらそのまま判定負けとなった。
でも力を出し切った「爽快感」を"もう一人のMくん"
から感じた。
負けたけど、見ていても気持ちの良い試合だった。
特に最終回は。
後日、ジムに練習に行くと、トレーナーから
"もう一人のMくん"が正式に引退したと聞いた。
残念だが、本人が決めた事だから仕方ない。
今後のことはまだ未定みたいだが、出来る事なら
"もう一人のMくん"には、これからもジムに残って
僕の自己満足につき合ってほしい。
そしていつか、ロッキー・バルボアのように、2〜3回
カンバックしても良いではないか。
次の記事→パクチーのアツーイ夜







